20th.FREE WAY DANCE FESTIBAL 終幕

能舞台

 「…手前にある舞台は、現世でのドラマの展開する場所で、此岸を象徴している。
 それにたいして、背後にある楽屋は、彼岸で、あの世を象徴していると考えられる。
 たとえば舞台への出口は鏡の間と呼ばれ、ここでは、あの世にいる霊魂を演者がその身体に感知し、それと一体化をなしとげ、劇中の霊魂そのものに変身する場所だといわれている。
 この二つの世界をつなぐのが橋懸で、此岸と彼岸の通路である。
 舞台と鏡の間の関係は、この世とあの世、此岸と彼岸という具合に、空間の二分法に従っている。
 舞台はこの世をあらわしているとしても、観客がそこに立ち入るわけにはいかない。
 あくまであの世の霊魂が降臨する場所で、その霊魂との対話がなされる。」
                                            -「能の舞台空間」磯崎新

 

能舞台とは異なるが、それでも発表会に演者として出る意義は、舞台、客席、舞台裾などを通して「此岸、彼岸、境界」をほんのわずか感じることが出来る。日常から切り離された無意識の領域に踏み込める。それが人生においてどれほどの意味を持つかはわからない。しかし、ユングの心理学でいうところの、自分の「影」をちらりと見ることができるのだ。

 

影はつまり、自分で認めたくない負の面、不足している部分、誤った態度、抑圧された願望など。そして、その人自身が大して評価していないようなもの、どちらかという否定しているもの、抑圧しているもの、未発達なもの、それらは「自我」から締め出され、影となる。

 

 

ゲネプロが終わり、しばしの休息&食事。

控室では黙々というほどでもないけれど、そこまで話が弾まない感じで食事が進んでいる。和室で畳のせいか、
「ん・・・ちょっとダレるかな・・・」とはBON先生。

たしかに和室はちょっと落ち着きすぎるかもしれない。

時計の針と周囲の動きに気を配りながら軽く予定を立てる。着替えや変装の段取りや、練習したり、息抜きで雑談したりする。着替えの準備、雑談、練習、雑談、ボーッとしてまた雑談。toshimi先生が気を遣ってくれて、舞台の美術係(?)の人に頼んでJAZZ用の帽子に蓄光テープを張ってきてくれた。
途中で帽子を脱ぎ捨て、はける時にそれを拾うのだが暗くて見えにくかったのである。

 

みな、思い思いの時を過ごす。

「・・・。」&「・・・。」&「・・・。」

そして時刻はイチナナマルマル。一七〇〇。

開場である。同時に「01.Jazz hiphop -GAN-」のメンツが動いた。開始である。

私は「最後の悪あがき(という練習)」をしてから着替えを済ませて、舞台裾に向かう。06番なのであまり時間はない。ところが降りてみるとまだ「01番」の進行中だった。少し時間がおしているらしい。

舞台裾で眺めていたが、ゲネの時より動きがイイんじゃないか? 何より表情が明るい。開幕に相応しいステージ。先陣を務める栄誉というのはそれほどまでに動きのキレを鋭くするのであろうか。ステージが終わり、「場をあっためておきましたからっ」と息を切らしながらコメントするN氏。

続いて、今回、随一の衣装を誇る「04.はじめてのBallet」も実に見事。やはり本格的な衣装はひと味違う。

独演の「05.Theater」。見ているけれど次が出番なのであまり頭に入らない・・・。最後の最後のミーティングではToshimi先生から励ましのお言葉をいただき、意を決して出撃。舞台の客席のざわめきが否が応でも緊張感を高めてくる。

「06.Basic Jazz」。

久しぶりのJAZZの舞台は実に感慨深い。

今までの発表会出場の中で、一番大きく踊れたのではないかと思う。後で教えてもらったが、多少ではあるが「笑顔」になっていたと。

それだけで十分である。

 

蓄光テープのお陰で脱ぎ捨てた帽子の回収も問題なく、無事に舞台からはけることができた。Toshimi先生とメンバーで解放感と達成感、喜びを分かち合う。お決まりの、いつもの光景ではあるが、それがイイ。次の出番もあるのでメンバーも早々に解散し、それぞれの準備に取り掛かる。残念ながら「07.」~「15.」までは観ていない。

先のブログにも書いたと思うが、あまり舞台裾で他の人を観ていると影響されて良くも悪くもブレる。そのため極力、観ないようにしている。モニターだと映像として観るので空気までは感じないので影響は少ないから平気なのだが。

控室で次の出演支度を開始。先に服を着替え、ウィッグを整えつつ、舞台の進行状況を見計らってヒゲを装着する。待っている間はガンプレイ(クルクル回すアレ)や振りの練習、合間に雑談といった感じ。

「13.HIPHOP(初級)」が終わったころにヒゲを装着開始。接着剤を口周りに塗布し、半乾きになったところでペタペタと張り付ける。ウィッグを被り、髪型を調整。最後に帽子を目深に被ったあと、煙草をくわえてから全体的なフォルムを整えて出来上がり。

ここから後は「次元大介」である。猫背気味で寡黙。付けヒゲのせいで口周りが動かしにくく、かなり喋りにくいのである。ヒゲをつけ、ウィッグを被り、目深に被った帽子。そしてくわえタバコとなると、それだけでけっこう気力と体力を消耗するのだ。

フリーウェイとしては珍しい部類に入る「16.コンテンポラリーバレエ」を眺めつつ、「17.Jazz3-Toshimi-」のステージを観る。音楽、振り、衣装のバランスが大変よく、耳馴染みに良い曲「Can’t take my eyes off you」とも相まって中盤の盛り上がりは相当なものではないかと思われる。

さて、TAPグループ。今回のTAPの布陣は過去最高ではないかと思う。
「19.」のパフォーマンス。「20.」のコミカル。「21.」のオーソドックス。これ以上ないと言ってもよい。

「19.Tap(adv)」においてはアドバンスの名に恥じず、非常にパフォーマンス性が高い。多人数であるだけでなく、様々な技を合わせての表現。「カップソング」や椅子を使った見せ技がTAPというものの幅を広げてくれる。良く出来るもんだなぁ・・・と。とりわけ今まで様々なパフォーマンスに取り組んだTAPのベテラン会員H氏の集大成ともいっても過言ではない。

「20.Tap(beg.)」はおそらく発表会史上初と思われる徹頭徹尾100%「コスプレ」での出演。「ガンプレイ」を織り交ぜて、「ルパン三世」における次元大介の世界観を再現。

「コスプレしてダンスをする」簡単そうで簡単ではないチャレンジ。いやホント、やってみれば分かります(苦笑)。技術的に難しいというよりも、調達・調整・調合ですね。
衣装・小道具などの「調達」
実際の動きやすさと耐久性、特徴的なアクションなどの「調整」
ダンスの振り付けとキャラの役作り、特徴などの「調合」

「21.BASIC Tap」は正統派TAP。一切の隠し味も余技も追加しない。スーツで極めたオトナの香りが舞台に満ちる。締めが正統派で終わりよければすべてよし。

「TAPの見どころが、実は分かりにくい」という意見もあり、今回は様々な局面におけるTAPの在り方を示すことができたのではないだろうか。

リボルバーの拳銃を持っていたのに「イジェクション(排莢)」が出来なかったのが唯一の心残り。コレをやることが出来れば、会場中の男どものハートを鷲掴みに出来たであろうに(笑)

※イジェクション(排莢):空になった「薬莢(カートリッジ)」を排出する動作。リボルバー拳銃における特徴的な動作のひとつ。ドラマや映画、アニメ等でのアクションとしては欠かせないワンポイント。女性にはまったく興味のないもののひとつ。

汗をかきかき控室に戻り、休憩しつつヒゲを修正。

すべての演目を終えた・・・・いや、最後のフィナーレが残っている。やらねばならないアクションがまだ残っている。なので、ちょっとだけ練習。

そして、いつもの光景だ。

20th.FREE WAY DANCE FESTIBALの最後のショウが幕を開けた。ショウの演目は「28.JAZZ-05」。

・・・を舞台裾で眺めながら、フィナーレを待つ。

暗幕の舞台裾。音楽が時を刻み、眩い光が皆の輪郭をぼやかす。誰一人として言葉を発する者はいない。恍惚と解放感、儚さと・・・。ひとつ煙草をふかしてみたくもなる。

「タバコはもうくわえてなくていいんじゃなくて?」
「いや、最後まで次元大介を演ってなくちゃなぁ」

そしていつもこのセリフを思い出す。
「ピーターパンのネヴァーランドでもなければ、どんな遊びも楽しいことも終わりが来るのだから。」

『蜂と神様』      金子みすゞ

蜂は お花の中に
お花は お庭の中に
お庭は 土塀の中に
土塀は 町の中に
町は 日本の中に
日本は 世界の中に
世界は 神様の中に

さうして さうして
神様は   小ちやな 蜂の中に。

 

「JAZZ-05」が終わった・・・・。「29.FINALE」である。観客の喝采を一身に浴びるこの高揚感。そしてすべてを終えた解放感。
まだやることは残っている。クラス紹介だ。変装、仮装をする楽しみにはここにある。

「06.BasicJazz」に次元大介の姿で出る事の快感。観客の誰もがまさかJAZZにも出ていたとは思うまい。ほんのわずかではあるが、次元の衣装でJAZZを踊る楽しさ。たまらないものがある。最後に煙草を軽く口から離して挨拶。顔を隠すコスプレをしたのは本当にこのためだけ・・・ではないが、かなり大きい理由なのである。

「20.TAP(beg.)」では銃を手に持った状態で出て、踊った後の挨拶で軽くガンアクション+投げキッス(これはメンバーで打ち合わせ済み。不二子ちゃんらしくやろーぜ、と)。ここまできっちり余すことなく出来たのは片山さんのフィナーレの稽古のお陰かもしれない。

さらに最後、ぜんぜん知らない観客の人から写真をお願いされたのはもう最高であった。コスプレ冥利に尽きる。コスプレと言っても舞台用のアレンジがなされているので近くで見ると思ったほどでもなかったかもしれない。ちょっと映りが気になるところ。

 

かくして発表会も幕になりけり。記念すべき20回目に出られた幸運を喜ばずにはいられない。

それは咲いている時間のとても短い花だけれども、また懸命に咲くのです。

 

さて、Amemuraさんの発表会まとめ。今回は演者側だったので全部を観ることはできませんでした。個人の独断と偏見によるベストファッション、新人賞、インパクト賞、優秀賞などはございません(笑)。ただ、「敢闘賞」はございまして、やはり「22.Stylish Ballet」に出場された「mei先生」をおいて他には無し! 常に前線に立ち、かつ新境地を開拓するその意気込み、感服いたしました。

 

今回の衣装は「スーツ」が多かったですね。”次元大介”が目立たないな~と(苦笑)。カッターシャツ系の衣装も多く、早着替えやアレンジがしやすい為だと思われます。突出したコーディネイトはありませんが、衣装的な完成度の高さと目立ち加減ではダントツで「04.はじめてのバレエ」。やはりK氏が「ベストドレッサー賞」ですね。

Toshimi先生に衣装案NGを喰らう率の高さがトップな私をもっともっとうならせる衣装をお待ちしております。

全体的に見るとTAP(beg.)のチャイナドレス+網タイツがセクシー系としてはトップクラスで「読み通り」(笑)の注目度。「不二子ちゃん」のコンセプトなので私からは「分かりやすいセクシー系。80年代のハリウッド女優的」の注文を出していましたが、女性メンバーが見事にチョイスしてくれた感じです。

出演者としては4~6クラスの掛け持ちの人がそれなりにいました。そういう意味では発表会慣れしている人や意気高く臨んでいる人が多く、良い意味で緊張感の張りつめていない舞台だったのではないかと。舞台裾でもあまり緊張感でガッチガチという人も少ない感じです。また、人数の多いクラスが増えたので見ごたえがありました。まさにJAZZの醍醐味といえましょう。

 

20回目としてふさわしい発表会でありました。

では、またの舞台でお会いしましょう。
劇中劇さながら、「この世は舞台」の中のさらに舞台に立つ奇妙さと、面白さと・・・。

 

I hold the world but as the world, Gratiano;
A stage where every man must play a part,
And mine a sad one.

「世間は世間、それだけのものだろうグラシアーノー、

つまり舞台だ、人はだれでも一役演じなければならぬ、

そしておれの役はふさぎの虫ってわけだ」

(『ヴェニスの商人1113ページ)

 

 

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